幼稚園教諭紹介

ICTを活用した未来の幼稚園教諭 認定こども園・吉田南幼稚園 園長 橋口大祐 先生


認定こども園・吉田南幼稚園

園長 橋口大祐 先生

近年、保育現場におけるICTの活用が進み、新しい幼稚園教諭像が求められるようになっています。鹿児島県鹿児島市の認定こども園吉田南幼稚園では、ICTを活用することで保育の質を高め、子どもたちの創造性や主体性を引き出す実践が行われています。
本記事では、認定こども園吉田南幼稚園の橋口園長にお話を伺いました。

ICT導入の背景と進化

認定こども園吉田南幼稚園では、2019年からICTを業務改善のために導入しました。保育者一人ひとりにPCを配布し、タブレット端末や園内大型モニターを活用することで、業務効率が飛躍的に向上しました。これにより生まれた時間は、保育者間での情報共有や保育環境の改善に活用され、結果的に子どもたちへのより充実したケアを実現しました。

その後、コロナ禍の影響を受け、2022年からは、ICTの活用範囲は子どもたちの育ちを保護者に共有する方向にも広がりました。特に、動画を活用したドキュメンテーションは、子どもたちの日常や成長を視覚的に伝えるツールとして、保護者とのつながりを深める役割を果たしています。

日々の業務、保護者とのつながりから、
子ども達に「伝える」「共有する」存在としてのICT活用へ

2023年以降、保育者が日々の保育の中でも活用するようになりました。言葉で伝えるだけでなく視覚優位な子どもへ画像や動画を用いて伝えることで理解の深まりを感じたり、その後の行動面でも理解できていることが自信となり子ども自身が主体的に遊びを深めているように感じたりしたためです。ICTを活用した振返りを取り入れることで、断面的に途切れた記憶を掘り起こし、活動と活動を繋ぐ事が出来るとも感じます。

いくつか事例を紹介いたします。

例1 子ども達の思考や創造が膨らむICT活用

ICTを活用することで、保育者は子どもたちの学びを視覚的に補完し、より深い理解と創造力を引き出すことができます。例えば、父の日のプレゼント作りでは、子どもたちが腕時計のデザインをタブレットと大型モニターを使って共有しました。これにより、子どもたちは具体的なイメージを持ち、制作活動への意欲を高めました。

例2 視覚優位な子どもに対してのICT活用

幼稚園には多様な子どもが通われており、制作活動の場面、口頭だけでの説明では理解がむずかしい子どもいます。こうした視覚優位の子どもたちにも分かりやすく伝えられる工夫として、折り紙の折り方を説明する際には、タブレットで動画を撮影し、それをモニターに映し出しています。ことばかけだけでなくICTを活用して視覚的に伝えることにより子ども達の活動への興味、理解が深まっているのです。

例3 ICTを活用して活動を視覚で振返る

運動会の組体操練習では、タブレットで撮影した動画を振り返っています。これにより、子どもたち自身が自らの姿を客観的に捉え、新たな気づきを得る機会を提供しているほか、ICTを活用した振返りだからこそ、子ども達同士が新たな視点を持ち、気づいたり・思いついたりと客観的視点を持ち、創造・判断に繫がること。子ども達同士で振り返り、感じた事を対話するなかで「共感・協同」する力が育まれるといった効果を実感しています。

子どもの学びを深めるICT活用の実践へ

さらに、吉田南幼稚園では子どもたち自身が主体的にICT機器を活用する場面が増えています。これからの時代を生きる子ども達にとって、様々な「情報活用能力」が必要になる事や、子ども達の「創造的思考」を育むことが求められていますからです。

こうしたことを背景に最近では、ICTが、保育者が子ども達に「伝える」「共有する」という存在から、子ども達が日常的に触れるICTへと変化してきたと感じます。タブレットが持つ機能を子ども達なりの自由な発想で日常の遊びと融合させ、アナログの遊び✕ICTによって遊びが深まっているのです。ICTを活用することで、アナログだけでは行きつくことのなかった「遊びの世界」を子ども達自身がICTを活用することにより生み出し、想像力や発想力が育まれるています。

例えば、タブレットを用いて園庭に生息する様々な生物を撮影する事で虫の「命」について考える機会となったり、タブレットで撮影した写真をプリントアウトして「むしさがしMAP」に貼っていくことで園庭内の様々な生態系に興味を広げる子ども達が増えました。むしさがしMAPに虫の絵を描き記すという手段もありますが、タブレットを活用する事でより早く誰でも気軽に出来る方法だからこそクラス全体で取り組む活動に発展していったと考えています。

ICTを活用した保育・幼児教育の実践は、質を高めるだけでなく、子どもたちの主体性や創造性を引き出す力を持っています。これから幼稚園教諭を目指す皆さんには、ICTを柔軟に取り入れながら、新しい時代の保育を共に創り上げていくことを期待しています。

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